逃げるしかなかった


私の母は子供のまま親になってしまった人だった

自分の感情のコントロールが出来ない人で

叱るんじゃなくて自分の怒りにまかせて

姉ばかりを殴る人だった

怒れる母も抵抗する姉も怖かった

私はその惨状を見ていることが出来なくて

自分を消した

脳の奥にセーフティゾーンを作ってそこに逃げ込んだ

私はどこにもいない 私はどこにもいない 私はどこにもいない

母は普段は優しい人だったから余計に恐ろしかった

一番最初に安全な場所を与えてくれるはずの人がくれたのは

人間は恐ろしい生き物だということだった

私は母を愛したことがない

優しい思い出もあるけれどそれは私の人格形成に作用することはなかった

母は私を無価値で家族に利用されることで存在していていい人間と刷り込んだ

私は所謂搾取子だった

抵抗する気力はなく私は壊れていった

守られたかった子供と守られなかった子供が今も胸の奥にいる

これは何の業なのだろうか

私はそんなに重いものを背負っているのだろうか

私は来世では人間でないものになりたい

牧草にでもなって他の生物の体の一部として

意思を持たず生きていきたい

私は私にとっての本当の家族を見送ってしまったから

血縁があるだけの人達のことはどうでもいい

1人で0葬でいい

何も残さず忘れ去られたい